【読書】職業としての小説家(村上春樹)

小説家の人生から学ぶ仕事術

僕はそのときに、何の脈絡もなく何の根拠もなく、ふとこう思ったのです。「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」と。

 

芸術家の頭の中を、一度で良いからのぞいてみたい。

それが第一級の、それも村上春樹さんのように国際的に評価の高い作家であれば尚更です。

 

普段ビジネスパーソンとして働く私たちにとって、彼の言葉から学ぶことはあるのでしょうか?

私はこの本を、今よりもっと良い仕事をしたい全てのビジネスパーソンにとっての優れた実用書だと考えています。私たちの日々の仕事に役に立つアドバイスに溢れた一冊です。

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 
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【読書】新・独学術(侍留啓介)

ビジネスパーソンの知的戦闘力を高める「受験参考書」の勉強法

裏を返せば、大学受験程度の知識を持っているだけで、さまざまな場面で本質的な意見を言ったり、相手に「この人の話に耳を傾けよう」と思わせることができるのです。

 

すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる。

かつて慶応義塾大学の塾長を務めた小泉信三さんの言葉です。

ビジネスパーソンであれば、勉強するべき事は沢山あります。

ExcelPowerPointの使い方、仕事の段取り術。果ては会計・ファイナンスの知識、経営戦略やマーケティングの知識など、書店に行けばその手の勉強のツールを容易に見つける事ができます。

けれども仕事ができる人なら、そうした基礎的なことは既にある程度身につけている事が多い。つまりトップ集団の中での差別化要因にはなり得ないという事です。

 

著者の侍留さんは、コンサルティング・ファームのマッキンゼーで活躍された方です。

マッキンゼーのようなトップ集団でサバイバルできるだけの知的体力を、一体どうすれば身につけられるのか。

侍留さんがたどり着いたのが、大学受験の参考書を使った勉強法です。ビジネスパーソンに必要な知識と論理の力を身につける、遠回りに見えて最短の学習ルートだと言うのです。

 

けれども大学受験で学ぶ事なんて、本当に基礎的な事でしかないのではないか?

そこで侍留さんが例にあげるのが、落語家の立川談志さんの言葉です。

立川流二ツ目昇進の基準は、まずは「50の根多(ネタ)を完璧にすること」。ベースとなる50の根多に自分の色を出すのが、二ツ目になって真打を目指す次の段階です。

本書で私が言いたかったことも同じです。まずは最低限の知識と論理を完璧にすること。そこに独自性や想像力を加えていくのは、その先の話です。

 

「大学受験の勉強をやり直して、本当にビジネス・普段の仕事に役に立つのか?」。その疑問に対する回答を、この著書の中で明快に語っています。

新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法

新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法

 
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【読書】読書の技法(佐藤優)

知の巨人に学ぶ「時間を圧縮する読書術」

なぜ、読書術が知の技法のいちばん初めに位置付けられなくてはならないのだろうか。

それは、人間が死を運命づけられている存在だからだ。そのために、時間が人間にとって最大の制約条件になる。

 

率直に言って、上級者向けの本だと思います。

初学者には読みやすい本ではありません。しかし、現段階である程度の読書の量を積み上げていて、「それをさらにブラッシュアップさせたい!」と意欲のある方には非常におすすめできる本です。

限られた時間で、どのように読書すれば、いちばん知識が身につくか。佐藤優さんのテクニックを学べるからです。

現在52歳の筆者は、そろそろ人生の残り時間が気になりはじめている。どんなに努力しても、知りたいことの大部分について、諦めなくてはならない。しかし、そう簡単に諦めたくない。そのときに役に立つのが読書だ。他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものにするのだ。

佐藤優さんほど、知的生産性の高い方はそういないでしょう。

外務省時代も、他の外務省員の追随を許さない活躍を見せ、作家になってからも驚異的なスピードで執筆活動を続けています。そのベースにあるのが、読書を通して培われた博識です。

どのようにすれば、最も効率良く知識を身につけることができるのか。知の巨人のテクニックから学ぶことは多いはずです。

 

また、本書の中では、「読書と併用して、大学受験の参考書を用いるのが、知識を身につける近道だ!」と語られています。

私も実際にいくつかの方法を試してみましたが、確実に、他の本を読むスピードや理解度が向上したという実感があります。気になった方はぜひ、試してみていただきたいです。

 

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

 
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【読書】世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? ─ 経営における「アート」と「サイエンス」─(山口周)

ロジカルシンキングMBAは「時代遅れ」?

グローバル企業が世界的に著名なアートスクールに幹部候補を送り込む、あるいはニューヨークやロンドンの知的専門職が、早朝のギャラリートークに参加するのは、虚仮威しの教養を身につけるためではありません。彼らは極めて功利的な目的のために「美意識」を鍛えている。なぜなら、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです。

では、そのように考える具体的な理由はなんなのでしょうか?

 

この本を読むべきなのは、次のような人たちです。

その他、ここまでの文章を読んでピンときた!という人もぜひ読んでほしい一冊です。

 

この本のタイトルを見て、「いわゆる中身の薄い簡易な本だろう」と思ってしまうのは本当にもったいない。アートの世界、ビジネスの世界を生きる全ての人の必読書です。

 

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【読書】村上さんのところ(村上春樹)

他人の人生経験を、自分のものにする

でも大変だったけど、楽しかったですよ。この仕事をしていてつくづく実感したのは、世の中にはバルク(嵩)が大事な意味を持つものごとがあるんだな、ということでした。

(↑読者から寄せられた37,465通のメールを前にして)

 

人が一生のうちに経験できる事は限られています。

 

色々な事にチャレンジしたい。色々な景色を見てみたい。けれどもそれら全てを実現する事は時間的に不可能です。

そんな時でも、読書を通してそれを代理体験する事ができる。それが本を読む楽しさです。

 

例えば、不倫をすることはできないけれども、不倫をする人の気持ちを文章を通して追体験することはできる。

難病に罹ることはできないけれども、難病に罹った人の気持ちを文章を通して追体験することはできる。

特に人生相談は、本の向こうにリアルの人がいます。その人の考え、その人の物語を文章を通して代理体験する事で、少しずつ自分の視野が広がっていく。

それがこの本を読む楽しさです。ここでは質問・回答を10個だけダイジェストで取り上げてみます。

 

作家の村上春樹さんは、早稲田大学の在学中に結婚、そして学生でありながらジャズ喫茶を開き成功を収め、その後作家としてデビューを果たしたという波乱万丈な人生の持ち主です。

彼ならではの独自の人生哲学が、質問への回答を通して垣間見えます。リラックスして楽しく読めて、けれどもタメになるアドバイスがたくさん含まれた一冊です。

村上さんのところ (新潮文庫)

村上さんのところ (新潮文庫)

 
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【読書】ゼロ ─ なにもない自分に小さなイチを足していく(堀江貴文)

最初の一歩が踏み出せない時は

僕自身の話をしよう。学生時代、僕は自分にまったく自信を持てなかった。中学高校では落ちこぼれだったし、女の子にはモテないし、大学に入っても麻雀や競馬に明け暮れる毎日だ。コンプレックスの塊で、自分という人間を信じるべき要素が、どこにも見当たらなかった。

しかし、徐々に自分に自信を持てるようになっていく。

それはひとえに「小さな成功体験」を積み重ねていったおかげである。ヒッチハイクで心の殻を破り、コンピュータ系のアルバイトに没頭する過程で、少しずつ「やるじゃん、オレ!」と自分の価値を実感し、自分のことを好きになっていった。

なにもない「ゼロ」の自分に、小さな「イチ」を積み重ねていったのである。

 

「何から始めれば良いのかわからない」。

そう思った時に読むのが、この本です。

 

かつて何も持たない「ゼロ」の状態からスタートして、ITで巨万の富を築き、時代の寵児と言われながらも、東京地検特捜部によって逮捕。そして有罪判決を受け、一気に「ゼロ」へと逆戻り。

そして今、この記事を書いている2018年時点で、堀江貴文さんは再びビジネスの表舞台へと舞い戻って活躍しています。

まさに堀江さんほど、「ゼロ」から「イチ」へと足を踏み出す経験を積み重ねてきた人はいないでしょう。

 

そんな彼の言葉には、他の誰にも真似のできない説得力に溢れています。 

はじめの一歩を、踏み出せない人へ。

仕事でも、プライベートでも、読むと元気が出てくる本です。

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

 
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【読書】「ズルさ」のすすめ(佐藤優)

弱者のための自己啓発本

私が読者にすすめるのは、ほんの少しだけ「ズルさ」を身につける事だ。

 

自己啓発本=意識高い系のためのもの」なのでしょうか?

みなさんの周りにも、いわゆる「意識の高い」人がいると思います。平日は深夜まで身を粉にして働いて、休日も自分磨きに余念がない。

あえて誤解を恐れずに、「意識の高い人」と「(それほど)意識の高くない人」がいるとしましょう。この時、後者の「意識の高くない人」は、ビジネス本を読む必要はないのでしょうか?

この本の魅力は、「意識の高くない人」のために書かれたものであるということ。言うなれば、徹底的に社会的弱者の目線に寄り添ったアドバイスに溢れている自己啓発本なのです。

結局、人生にとって大切なのは、「いかに負けるか」ということなのかもしれません。自分を見失わないように、上手く負けることができるか。

佐藤優さんは今や押しも押されぬ人気作家。 しかし、外務省勤務時代に「国策捜査」の一環で逮捕・投獄されたという挫折経験の持ち主でもあります。

そんな彼からは、「組織のトップを目指せ!」というマッチョなアドバイスは出てきません。

競争に疲れたら、無理に身も心もすり減らす必要はない。世の中の理不尽さを、どうすれば上手く切り抜けられるか。その実践的な処世術が詰まったこの本は、「意識高い系」の人も含めて、全ての人とって役に立つ一冊です。

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