【読書】僕らが毎日やっている最強の読み方(池上彰・佐藤優)

ビジネスパーソンが知識を磨くための最良の教科書

でも、傍から見るほど苦しくはないのですね。毎日の勉強で視野が広がったときの喜び。国際情勢に対する自分なりの読みが当たったときの満足感。きっと、こうした知的快楽に背中を押されて、私たちは走っているのだろうと思います。

 

「知は力」です。

知識があれば人より一歩前に出れる。さらに知識を自分の頭で組み立てて、自分なりにより深い洞察を得ることができれば、周りの人からもさらに一目置かれるでしょう。

ビジネスパーソンであれば、「知は力」という言葉の重みを無視することはできないはずです。

 

知識、つまり情報のプロと言えばこの二人。

ニュースを分かりやすく伝えるプロの池上彰さんと、外交の現場で情報戦を乗り切ってきた佐藤優さんです。

お二人とも、著書を出せば飛ぶように売れる人気作家。それは二人の言葉、発信する情報にオリジナルの「価値」があるからです。

正しい情報をインプットし、価値ある情報をアウトプットする技法。それは彼らの達人技であって、他の人には真似できないものなのでしょうか?そうではないと、池上さんは語ります。

佐藤氏も私も、知識を吸収し、自分の分析力を高める手法に、奇抜なものはありません。ごくオーソドックスな基礎的動作を繰り返しているだけ、とも言えます。

ということは、読者のあなたにもできることが多いということなのです。 

本書には、至極当たり前のことしか書かれていません。けれども書店に行くと、そうした当たり前のことが体系的に・網羅的に書かれたガイドブックは驚くほど少ないことに気づきます。そこに本書の価値があるのです。

これから腰を据えて勉強してみようと思うビジネスパーソンに役立つ、初級から上級までの勉強法のテクニックが網羅された良書です。

 

 

 

勉強を通して自分の世界を広げる

なぜ勉強することが大切なのか。その目的は人によって様々です。

佐藤 この本で解説するのは「読みこなす技法」になりますが、その根底にあるメッセージは、知は「武器」であり「楽しみ」でもあるということです。知識や教養を身につける動機は人それぞれでしょうが、私にとってはビジネスや人間関係で欠かすことのできない「武器」である側面が強い。同時に、物事の背景を深く知ること自体が、知的好奇心を満たす純粋な「楽しみ」にもなります。

「仕事に役立つ」。これが社会人が勉強するメリットです。

しかし勉強を繰り返していくうちに、「勉強して知識を得ることそれ自体も楽しい!」という感覚を得ることができる。これもまた、勉強のメリットと言えるでしょう。

佐藤 それに、やはりこれから先、グローバリゼーションは避けられないわけです。これまで日本だけなら通用していた常識が、世界ではとんでもない非常識であることも多い。そのとき知識は、生き残るための武器であり、かつ「防具」にもなります。歴史認識の違い、宗教や価値観の違いはビジネスのうえで致命傷になりかねませんから。

勉強することによって教養が身につき、その結果として失言をしなくなる。これも佐藤さんが考える、勉強することのメリットです。

なぜ勉強をするのか、その目的は様々です。けれども勉強を通して、自分の世界が広がる。これは確かに言えるでしょう。

 

新聞を読んでいないと相手にしてもらえない

池上さんも佐藤さんも、情報のプロです。

だからこそ、最も信用度の高い情報を得るツールとして、新聞を重視しています。

佐藤 序章でもお伝えしたとおり、「世の中で起きている出来事を知ろう」と思ったとき、まず基本となるのは新聞です。意外と軽視されがちですが、新聞が「世の中を知る」ための基本かつ最良のツールであることは、今も昔も変わりません。

外交官時代の佐藤さんにとっては、「他の人が持っていない機密情報をいかに手に入れるか」が勝負になります。

それではどこからそうした情報を得ているのか。佐藤さんは、「必要な情報の約6割は新聞から得る。人から得る情報は、全体の1割程度にすぎない」と語ります。

池上 人から得る情報が全体の1割程度というのは、少々意外ですね。

佐藤 人から得る情報は機密性が高く、非常に重要です。比率としては少なくても密度の濃い情報です。ただ、そういった機微に触れる情報を聞き出そうと思ったら、やはり新聞を丹念に読んで内外の事情に精通していないと話にならないんですよ。

新聞で得られる情報はオープンなものであり、誰にでもアクセス可能です。

だとしたらそれを読んでも他者との差別化にはならないのでしょうか?

そうではないと佐藤さんは語ります。そこで得た情報を組み合わせ、事前に仮説を組み立て、その上でキーパーソンに会いに行く。そうすることで初めて、情報戦を制する事ができるのです。

だとすれば私たちも、情報を得る足腰を鍛えるという意味で、新聞の読み方を学ぶのは大切なことでしょう。

 

空き時間にはスマホで雑誌を読む

本書の中で紹介されているのが、「dマガジン」というサービス。月額たったの400円(税抜)で、様々な人気雑誌を読む事ができるという優れものです。

www.nttdocomo.co.jp

 

私自身、以前は空き時間があるとスマホを取り出し、ネットサーフィンに時間を使ってしまいがちでした。

しかし最近ではdマガジンの中にある「週刊ダイヤモンド」や「週刊東洋経済」をスマホで良く読みます。

池上 たしかに雑誌は「興味や関心、視野を広げる」のに役立ちますよね。新聞も同じですが、興味のないテーマや記事もページをめくるとおのずと目に入る。その点が、興味ある記事だけをクリックするネット情報と大きく違うところですね。

佐藤 「知りたいことだけ知ることができる」というネットの功罪は、最近の大きな問題のひとつです。どうせ同じ隙間時間なら、無料のネットサーフィンに時間を費やすより、きちんと編集・制作された雑誌を読んで、多様な情報を得たいと私なら思いますね。仕事に必要のない趣味や娯楽の情報でも、そのほうが質も高いし密度も濃いですから。それが月に数百円程度の負担で済むならなおさらです。

彼らが否定するインターネットのブログ記事を書いている自分が言うのは何ですが、本当に価値ある情報を手にいれようと思うのなら、やはり雑誌や書籍をメインに据えるべきでしょう。そしてそこで疑問に感じた各論を調べる際に、初めてインターネットを使うのです。

 

インターネットとは適切な距離を取る

今や何かあればスマホで検索できる便利な時代になりました。しかし佐藤さんは、「インターネットは上級者向けのメディアだ」と語ります。

池上 ネットはうまく使えば便利で有益なツールになる反面、時間を浪費したりノイズ情報に惑わされる危険性もある「諸刃の剣」ということですね。いろいろ情報が無料でとれるのは事実で、そこには大きなメリットもあるわけですが、うまく使いこなすのは思った以上に難しい。

佐藤 本当にそう思います。多くの人が誤解していますが、じつはネットは「上級者」のメディアなんですね。上手に活用すれば、マスメディアが報じない情報を広く深くとることもできますが、活用するスキルをもたないと、時間ばかりを浪費してしまう極めて効率の悪いツールにしかならないわけです。

時間を取ると言えば、ネットサーフィン以外にも、SNSもその一つでしょう。

池上さんはSNSとの付き合い方について、こんな提案をしています。

池上 SNSのメリットは、インプットよりアウトプットにあると私は思っています。きちんと読み手を意識して、自分が得た情報を整理して書く。そうやってアウトプットすることで、知識は自分のものになっていきます。それにアウトプットを意識してインプットするほうが効率も上がっていくはずです。

佐藤 たしかにそうですね。池上さんも私も、書籍や講義、講演会といったアウトプットの場があるから、インプットの効率がよりよくなっているのだと思います。

池上 はい。ただSNSは相互コミュニケーションが前提になっているので、ブログやレビューサイトのほうがアウトプットの場には適切かもしれません。SNSで発信力をつけようと思ったら、まず正しい日本語で、親しい日本語で、親しい友達だけではなく誰が読んでもわかりやすい文章を書くことを意識するといいかもしれませんね。

自分もブログの文章を書くときは、「インターネットの言語ではなく、できるだけ書籍の言語を使って書く」という意識をしています。

さらに本書の中では「ネット断ち」についても書かれています。あえてスマホやパソコンの電源を落とし、読書に集中するのです。

佐藤 私だって、ネットサーフィンができる状況なら、ついつい見たくなると思うんです。人間は誘惑に弱い生き物で、易きに流れてしまうのはみんな一緒ですから。集中しようと思ったら、まず環境を整えることが大切です。(略)

佐藤 とはいえ、いきなりネットを断ち切ると「禁断症状」が出るかもしれません。まずは新聞を読むあいだの30分だけ、次に書籍を集中して読む1時間だけ・・・・・・と、徐々に「ネット断ち」の時間を長くしていく。簡単にネットにはつながらない、その不自由さが、逆に知的強化にはメリットになるわけですから。

この本の魅力は、「時間をどう使うべきか?」という基礎的で細かい部分についても丁寧に考察を加えているということ。

何から始めれば良いか分からない初学者にも優しい構成になっています。

 

本を読む時間を「天引き」する

新聞・雑誌で得られるニュース。それを理解するベースとなる知識を身につけるには、書籍が最適だというのがお二人の共通見解です。

池上 基礎知識はすぐに身につくものではありませんが、しっかり土台を厚くしておけば、結果として効率よく知識を蓄積できるので、手を抜かないでほしいところですね。「急がば回れ」です。

佐藤 なぜ書籍を読むことが大切かというと、書籍は基本的に、体系的にひとつのまとまった世界としてないようを提示しようとしているからです。そのうえ、新聞や雑誌と同様、「編集」「校閲」というフィルターが書籍にはきちんと機能しています。土台となる基礎知識を身につけていくには、「記述の信頼度」と「体系的」かどうかの2つが重要で、それに最も適しているのが書籍です。

このブログにしてもそうです。体系的なメッセージを伝える事は諦めています。

ブログというツール上で可能なのは、あくまでも体系知への入り口を紹介すること。そこから先に進むためには、書籍を読むしかないと、私は考えています。

 

また、読書時間については、「あらかじめ天引きする」という考え方が大切だと佐藤優さんは語ります。

佐藤 「本を読む時間がとれません。どうすればいいですか?」という質問をよく受けます。これに関しては、まずは「1日これだけの時間、本を読む」と自分の中で最初に決めてしまわないと難しいと思います。全体の「器」を先に決め、そのためにどの時間帯にどれくらい捻出するか、「逆転の発想」で考えるわけです。

池上 「読む気」さえあれば、時間はいくらでも見つけられるはずですからね。行き帰りの通勤時間、昼休みの10分、ランチの時に注文してから運ばれてくるまでの5分、寝る前、起きたあとの15分。忙しければ忙しいほど、あらかじめ時間を確保しておく必要があります。

 さらにお二人は、「飲み会の時間も減らせば読書の時間を増やせますよ」という思い切った提言しています。

佐藤 極論をいえば、「酒を飲むのは人生の無駄だ」と私は思っています。二日酔いなんて、ただの中毒症状で言語道断ですし。

池上 私も、よく「どうしてそんなに本が読めるんですか?」と聞かれますが、「下戸で酒が飲めないからです」と答えると、大半の人は納得してくれます。

佐藤 酒飲みほど、自覚しているんだと思いますよ。 

人付き合いと自分の時間。どちらをどのくらい優先させるかというさじ加減はとても難しい問題です。

人によってその優先順位は異なるでしょう。しかしその二つの時間はトレードオフになっているという事実は、冷静に認識しておいた方が良さそうです。 

 

知識の基礎固めには受験参考書が最適

最後にお二人は、知識の基礎固めのツールとして、なんと大学受験の参考書をオススメしています。

佐藤 この本でも強調してきましたが、義務教育レベルの基礎知識に欠損があると、いくら新聞や雑誌、ネットニュースを見ても、その内容を「理解する」ことができません。本をたくさん読んでも、知識がきちんと積み上がっていかない。すべての知識の土台となる基礎知識をいかに身につけるか、それがインプットの技法において、じつは最も重要なことなんですね。

池上 しっかりした土台の上に積み重ねてこそ、「情報」は「知識」となり、それを繰り返すことで「使える知識」「教養」になる。誰かに質問されたときにきちんと答えられる、他人に説明できるレベルの「知識」に転化しなければ、ビジネスで役立つ武器にはなりませんから。

この本では、「具体的にどうやって勉強すれば良いか?」という部分についても細かく書かれているため、何から始めれば良いか迷うことはありません。例えば歴史の勉強方法について。

佐藤 歴史の勉強のいいところは、学生時代にサボってしまった人でも、比較的アプローチが容易なことです。数学や物理などの理系科目は、ある程度時間をかけて段階的に学んでいく必要があるため、高校や大学できちんと勉強した人との差を埋めるのが難しい。その点、歴史ならば、教科書や学習参考書を使ったり、あるいは後ほど述べるオンライン学習のスタディサプリ」を活用すれば、比較的短期間で通史が身につきます。多くの人にとって、学びのテーブルにつくのが容易なんですね。

池上 それに、歴史は現在につながっているので、いちから勉強し直すにしても、まったくの知識ゼロからスタートというわけではありませんからね。

佐藤 ビジネスパーソンはインプットの時間も限られていますが、今後世界を舞台に勝負していきたいエリート層なら、さらに腰をすえて歴史を学んでおいても損はありません。

スタディサプリは、リクルートが大学受験向けにスタートした、月額980円(安い!)でプロの予備校講師の授業がスマホで見れる、というサービスです。

私自身も佐藤優さんのアドバイスの通り使ってみましたが、効果あり!でした。是非オススメしたいです。

newspicks.com

 

こうした基礎の部分を大切にしているからこそ、二人の主張には信憑性があり、多くの人が価値あるものと認めているのだと思います。

chrono.hatenadiary.jp